SIM LOCK JAPAN #2のまとめと感想


16日の「SIM LOCK JAPAN」、最初から最後まで見ました。
※最近話題のSIMロック解除強制化に関しての意見交換会です。
日本通信の福田専務、ソフトバンクの松本副社長、
iモードおサイフケータイの生みの親の夏野さんが参加されており、
その他にもモバイル業界に詳しいジャーナリストの方々も複数名いらっしゃいました。


いずれの方も、特にSIMロックフリー自体に反対はしていないようでした。
しかし、SIMロックフリー実現で「まるで夢のような世界が待っている」かのような
誤解が広まっていることについては非常に危惧されていましたね。
何度も副大臣のブログを取り上げていましたが、総務省の関係者が実情を理解されていない。
このまま話が進んでいってしまうことを恐れているようでした。
ユーザーの声、通信キャリアの声、端末メーカーの声を
もっと聞くべきだ、聞く機会をもっと設けてほしいという主張は最後までありましたね。


SIMロック解除の議論の前に、やらなきゃいけないことがたくさんある、ということも強く述べられていました。
その中でも大きな問題として2つ、周波数と通信方式が挙げられました。
周波数は国内の通信キャリアでもばらばらで国際標準にも乗っかっていないし、
周波数が一致したとしても、フィルタリングの問題を解決しなければ電波が繋がらない。
通信方式も、現状でドコモとソフトバンクW-CDMAauはCDMA2000と一致していませんし、
3社とも3.9GとしてLTEを採用すると言っても、
ロードマップがバラバラになっていること、
現実的には3G回線とのデュアル仕様になるであろうということも問題視されました。


今このタイミングで、この仕様のまま、SIMロックフリーを強制的に実現することで
ユーザーはどんな利益を得られるのかについてなど、実際にはかなり議論は割れました。
最後まで意見は割れていたと言えるでしょう。
しかしそれはお三方の立場の違いや認識の差が原因であり、ビジョンの大筋は共通していたと思います。
日本通信は現在音声端末の提供はしていませんから、
実際に自社ユーザーにポストペイド型で音声端末を提供するようになれば、また意見も変わってくると思われます。
そういう利害を取り除いていけば、描いている未来はほとんど同じだったと言えるでしょう。


いずれはPCのように、通信とハード/ソフトが分かれていくのが理想でしょう。
モバイル通信でPCのように無規制でどんどん自由にいろんなことができるようになるのも、理想でしょう。
しかし現状、それは不可能です。
技術的には解決できることもたくさんありますが、かなりのコストと時間が必要になる。
SIMロック自体は今からでも解除した状態で販売できるそうですが、
現状に対する問題についての解決がなされぬまま、ロック解除したって意味がない。
現実的には音声通話しかできない。auの場合はそれも不可。
なのに、なぜ急にこのタイミングでロック解除しなければならないのか。


ここにまとめたものは問題のごく一部を抽出したものですが、
それすらも総務省で議論している人間がすべて理解できているとは思えないという現実。
このまま議論を進めて良いのでしょうか。


比較的低コストで実現できるスマートフォンSIMロックフリー化などは
すぐ推し進めていっても特に問題はなさそうですが、
すべてのモデルでSIMロック解除を強制することには疑問ですね。
SIMロックによる販売モデルは海外でも高価なモデルを中心に普及していて、
その有効性は広範囲で認められているのに、
それ自体を総務省が規制する必要性も理由もないでしょう。


SIMロックフリー強制の推進派が描くビジョンは、
決してSIMロックフリーを強制すれば解決する問題ではありません。
もっと深い根っこの部分から、各通信キャリアと端末メーカーと総務省が歩み寄って、
ときにはユーザーの声も聞きながら、議論しなければいけない。


今はビジョンだけが一人歩きして、誤った知識の中で議論されている。
それが問題であることを関係者が認識し、
方針の立て直しが必要であることに気づいてほしいな、と。
官僚にそれができるのか…はたはた怖い部分ですね。


通信キャリアさんがどれだけ苦労しているのかは、その話ぶりからわかりました。
ただドコモとauのスタンスも明らかにしてほしいし(微妙に違うはず)、
端末メーカーの意見も微妙にあるでしょう。
シャープのように全キャリアに端末提供しているところもあれば、
富士通のようにドコモだけでずっと端末提供してきたところもあるわけで。
開発奨励金なしで端末開発をするなんてできるのか?
通信キャリア主導でサービス開発をやってきたのに
今更メーカー主導であれもこれもと考えていくことはできるのか?
やろうと思えばできるはずでしょうけど、
その反動を吸収し、軌道に乗せるまでどれだけコストと時間がかかるのか。


ユーザーの立場として考えれば、
SIMロックフリーSIMロックが選べると嬉しいですし、
通信キャリアに依存しない形でデザインされたサービスが利用できるようになればいいね。
2年契約し終わったらロック解除もしてほしいです。
しかし現実的にはSIMロックされたモデルを選ぶでしょうし、
通信キャリアに依存したサービス(たとえばiチャネルや電話帳バックアップなど)は
やはり快適なので、利用し続けたいですね。
通信キャリアに関係なく、快適にそれらと類似したサービスを
国産の音声端末で利用できるようになるまでやはり5年10年かかるでしょうから、
今このタイミングでやるなら、強制解除だけは勘弁。
やるならスマートフォンのみで、お願いしたいですね。


ビジョンは素晴らしいので、しっかり議論して、
着実にどのようなステップを踏んでいくのかをみんなで決めてほしいです。


以上!